消失点が画面外にあるときの描き方|「真ん中ー真ん中」分割法
画面外に消失点があると
消失点を設定するのが面倒だったり
どうすればいいのか
分からなくなることがあります
すでにあるラフやレイアウトをもとに描く場合は
無理に画面外の消失点を探さなくてもかまいません
画面内に見えている両端の線を基準に
真ん中-真ん中と分割していけば
消失点を決めずに
奥行き方向のガイドを作ることができます
そのガイドをもとに
元の印象を大きく変えずに
線を整理していく方法が
「真ん中ー真ん中」分割法です
(もちろん、この名前は僕の造語です)
透視図法の代わりではなく
すでにあるラフを大きく修正せずに
線を整理したいときに使う方法です
僕は17年間
アニメ背景の仕事をしてきました
実際の仕事でも
消失点を正確に取ることより
元のレイアウトの印象を残すことを
優先したい場面が何度もありました
この記事では
なぜ消失点を無理に探さなくていいのか
その理由から
「真ん中ー真ん中」分割法の使い方まで紹介します
画面外の消失点を無理に探さなくていい理由
最初から消失点を設定して
しっかり描く場合は別ですが
フリーハンドで描かれた絵を
あとから消失点に合わせて清書すると
元の印象が変わってしまうことがあります
個人で描いた絵なら
自分の判断で修正できます
しかし背景の仕事では
演出や監督のチェックを通ったレイアウトを
預かって描くことになるため
必要以上に雰囲気を変えるわけにはいきません
パースの正確さより
画面の収まりや絵の雰囲気
演出意図を優先して描かれていることもあるからです
また、下図のように
ビル正面の車道や歩道で
人や車が動く場合は
他のアニメーターや
3DCGの担当などとの
兼ね合いがあるため
直したくても直せない場合もあります
「真ん中ー真ん中」分割法のやり方
上図のフリーハンドで描いたラフをもとに
具体的な手順を説明します
まず、下図の赤線のように
画面内に見えている
奥行き方向の両端の線を拾って
赤い線を引き
黒い2本の垂直線を引きます
下図のように
黒い2本の垂直線を
それぞれ2等分する赤い線を引きます
僕の場合は
途中の線を拾うよりも
画面の両端を基準にしたほうが
誤差が少なくなるように感じます
真ん中は
できる限り目分量で取ります
慣れないうちは大変ですが
僕は意外と早く感覚をつかめました
この方法では、デジタルでも
正確なグリッド線に合わせずに
目分量で直線を引きます
正確なグリッドに合わせすぎると
フリーハンドのニュアンスを
拾いにくくなります
ひたすら
真ん中ー真ん中と線を引き続けていきます
完全なフリーハンドで描いたラフのビルでも
赤い線は大きく外れていないことが
わかると思います
特に必要ありませんが、参考までに青い線で
アイレベル(水平線)を引きました
反対側も同様に作業します
こちら側も青い線で
アイレベルを入れています
ここで今までに引いた
赤と青の線を重ねてみると
ここで時間的余裕があれば
紙をつぎ足す、縮小コピーする
デジタル上で作業するなどして
消失点を設定し直して
清書することもできます
ただ、元の絵の雰囲気を
損なわずに消失点を設定するのは
とても難しいです
最初の印象が
「一見狂っているようには見えない絵」
である以上
必要以上の修正は必要ないと判断して
このまま赤い線をもとに
清書作業に入るのが無難です
必要なのは
あくまでも自然に見える絵であって
正確な絵ではないからです
街並みやビル群を描くときは
奥行き方向の線だけでなく
ビル全体を大きなかたまりとして捉えること
も大切です
一棟ずつ描く前に
ビル群をかたまり・明暗・距離感で整理する考え方も
別記事でまとめています
正確に直すことで元の印象を崩すこともある
2018年ごろ、実際の背景作業で
こんなに上手いレイアウトは
劇場作品でもなかなか見ることができないな
と思うものがありました
それは
フリーハンドで描かれた
一点透視のビル群でした
そういった上手いレイアウトは
「こう塗ってほしい」と
言われているかのように
完成形がはっきり見えます
これは
線画の修正の必要はないだろうと思って
背景作業に入ろうとしたんですが
画用紙にカーボン紙で
転写する準備を始めてみると
一点透視なのに
収束するはずの線が1点に収束せず
消失点の見当がつきませんでした
時間をかけて修正する余裕も
なかったので、覚悟して原図を
そのまま画用紙にトレスして着彩しました
仕上がりは普段以上に
魅力的でしたが
描いている間は
不安で仕方ありませんでした
自分では直せないからです
線一本の角度がズレただけでも
絵として破綻しそうで
少なくとも自分の手には負えない
そんな緊張感がありました
当時は背景会社に就職して
13年目くらいだったと思います
広角、望遠、複数消失点も
理解したうえで修正して
描いてきたつもりでしたが
もしかしたら修正したつもりで
必要以上にニュアンスを
変えてきたのではないか
とも思いました
絵は図面ではありません
パースを正確にすることだけが
目的ではないんだと思います
消失点を設定して描くことは
アニメ背景では身につけるべき基本です
ただ、身につけたあとに
その方法だけに縛られすぎないことも
大事だと思います
僕が消失点を決めずに
描くようになったのは
遅いほうだったと思います
最初は消失点を決めないと
不安で仕方ありませんでしたが
少しずつ目分量で描く比率を
増やしていきました
もし
消失点を決めずに描いたことがない
という方は
これを機に試してみてください
無理だと思う方も
こんな考え方や方法もあるんだと
心にとめておいてもらえたらと思います
知らないより、知っているだけでも
行動の可能性は広がると思います
広角・標準・望遠の見え方と
消失点の距離の関係を知りたい方は
消失点の距離から広角・標準・望遠を考える記事
もあわせてどうぞ
まとめ
消失点が画面外にあるときは
無理に消失点を探すより
画面内の両端の線を基準に
「真ん中ー真ん中」と分割していくほうが
自然にまとまることがあります
これはアニメ背景に限ったことではなく
自分の絵のラフを仕上げるときにも
使える考え方です
正確さだけでなく
元の印象や画面の収まりを
どう残すかも大切です
ラフを仕上げるときの参考にしてみてください
【あわせて読みたい】
消失点やパースも大切ですが
それより上位にあるのは
「何をどう見せたいか」という意図です
目的に合わせて
配置や空間を決める考え方については
絵を描くときに必要な知識の分類と関係性を整理した記事
でも触れています
ラフや実景から
どの線を拾うか練習したい方は
写真や実景から線を拾う練習を含む30分基礎練習の記事
も参考にしてみてください
透視図法を学んだあとに
消失点に頼りすぎない描き方も知りたい方は
消失点に頼りすぎない描き方を扱うおすすめ本も
あわせてどうぞ







