模写で見本と同じように筆を動かしても
葉や草のタッチを再現できず
悩んだことはないでしょうか

原因は描き方だけでなく
使っている筆の種類や
穂先の状態にあるかもしれません

僕は17年間
アニメ背景の仕事で
日常的に削用筆を使ってきました

今回は、その経験をもとに
アニメ背景を描くときによく使われる
3種類の削用筆を描き比べます

実際に比較してみると
新品の状態では
3本にそれほど大きな違いは感じませんでした

しかし、使い続けて穂先が丸くなると
筆ごとに描きやすいタッチが
大きく変わります

模写で元画像の筆跡まで再現したい場合は
描き方だけでなく
使う筆の特徴にも注意が必要です

筆の使い心地には
個人差があるため
あくまで僕個人の意見と感想として
ご覧ください

今回比較した筆は
すべて自分で購入し
実際に使用したものです

なお、本記事には
アフィリエイトリンクが含まれています

今回比較するのは
次の3本です

  • 東京名村大成堂
    特選 東紅 大
  • 松月堂
    特製 アニメ用筆 円
  • NICKER
    線描筆 蒼鷹 Φ8.5
比較内容
  • 新品3本の描き比べ
  • 同じ商品の新品と使用済み筆の比較
  • 種類や摩耗状態が異なる使用済み筆の参考比較

筆は使い続けることで
穂先の形や柔らかさが変わります

そのため
新品のときの描き味だけでなく
古くなったときに
どのようなタッチになるのかも
比べてみました

今回の比較条件
  • すべて同じ紙と絵具を使用
  • すべて僕が同じ種類のタッチを描画
  • 新品は使い始める前の状態で比較
  • 使用済みの筆は
    使用期間や摩耗の程度がそれぞれ異なる
  • 松月堂は同じ商品の新旧比較ではなく
    別モデルの参考比較

紙:ニューTMK
絵具:ニッカー ポスターカラー ブラック

手描きによる比較のため
筆圧や絵具の含ませ方を
完全に同じ条件にすることはできません

また、使用期間の正確な記録が
残っていない筆については
分かる範囲で
穂先の状態を記載しています

新品の削用筆に共通する傾向

僕がこれまで使用してきた
新品の削用筆には
次のような傾向がありました

  • 筆の戻る力が強く
    タッチが細くなりやすい
  • 筆先を割っても
    描いているうちに元に戻りやすい
  • 使い始めて3日ほどすると
    柔らかくなって使いやすくなる
  • 僕の場合は
    1日6時間ほど使い続けると
    1か月くらいで筆先が丸くなってきました

僕が経験したアニメ背景制作では
「地塗り」が終わったあとの仕上げ作業に
削用筆をよく使っていました

そのため
毎月新しい筆をおろしていると
1年ほどで
筆による違いにも気づきやすくなります

年に数回ですが
特に筆先がそろいやすい筆に
出会うこともあります

そのような筆は
古くなってからも取っておき
タッチによって使い分けています

今回比較した植物のタッチ

今回は
筆による違いが表れやすい

  • 長いストローク
  • 三角形の点描

を中心に比較しました

削用筆で描いた長いストロークと三角形の点描
長いストロークと三角形の点描の画像

一方
通常の描き込みでできる筆跡には
新品の状態では
それほど大きな違いを感じませんでした

筆によって
穂先の形には

  • 鋭く尖っている
  • 細長い形をしている
  • 先端に丸みがある

といった違いがあります

3種類の筆の穂先比較イラスト
3種類の筆の穂先比較イラスト

その形の違いが
長いストロークの先端の丸みや
三角形の点描の細さや広がり方
などに表れます

新品3本を描き比べ

まずは、新品の

  • 東京名村大成堂
    特選 東紅 大
  • 松月堂
    特製 アニメ用筆 円
  • NICKER
    線描筆 蒼鷹 Φ8.5

を描き比べました

新品の特選 東紅 大、特製 アニメ用筆 円、線描筆 蒼鷹 Φ8.5による植物のタッチの描き比べ
新品3本による植物タッチの比較画像

描き比べた感想

アニメ用筆 円は
東紅よりも根元が太く
力を入れやすい印象があります

三角形のタッチは
東紅よりアニメ用筆 円のほうが
細くなりました

蒼鷹は3本の中では全体的に細く
繊細なタッチになりました

細かな違いはありますが
今回比較した3本では
新品の状態で
それほど大きな差は感じませんでした

新品と使用済みの筆を比較

続いて
それぞれの新品と古い筆を比較します

使用済みの筆は
使用期間や摩耗の程度が
それぞれ異なります

そのため
同じ条件の新旧比較ではなく
手元に残っている筆による
参考比較として
ご覧ください

東京名村大成堂 特選 東紅(大)

新品と使用済み筆の違い

特選 東紅 大の新品と使い込んだ筆で、点描や草、葉のタッチを描き比べた画像
特選 東紅 大の新品と使用済み筆による比較画像

新品の特長

  • 新品はまだ筆が硬いため
    点描が正三角形になっていません
    →3日ほど使うと柔らかくなり
     正三角形に近いタッチになります
  • 筆先を割って草のタッチを描いても
    描いているうちに筆先がそろってきます

古い筆の特徴

  • 筆先を割って描いた平行線の密度が
    新品よりも高くなっています
  • 画面中央下にある
    外側へ向かう葉のようなタッチも
    新品より丸みがあります

同じ東紅でも
穂先の状態によって
違う植物を描いたような
印象になりました

使用期間の異なる東紅を比較

次に

  • 新品に近い筆
  • 3か月ほど使用した筆
  • 1年以上使用した筆

の穂先を比較しました

使用期間の異なる東紅の穂先の比較画像

新しい筆は
元に戻ろうとする力が強いため
筆先を広げても
それほど大きくはばらけません

一方
使い込んだ筆ほど
筆先を割ったときに
毛先が広がりやすくなります

実際に
それぞれの筆で描いたタッチが
下の画像です

使用期間の異なる東紅の筆跡比較画像

筆先が丸くなると
先の尖ったシャープなタッチや
整った三角形の点描は
描きにくくなります

その一方で
筆先を割った平行線や
丸みのある葉のタッチは
描きやすくなることがあります

僕は東紅を

  • 新品から1か月ほど使った筆
  • 3か月から半年ほど使った筆
  • 1年以上使った筆

というように
穂先の状態によって
使い分けています

使用期間は
あくまで目安です

筆圧や使う時間によって
摩耗の進み方は異なるため
実際には
使用期間ではなく
穂先の状態を見て選んでいます

古くなった筆も捨てずに残すと
描きたいタッチに合わせて
使い分けられます

松月堂の筆は別モデルによる参考比較

今回は
使い込んだアニメ用筆 円が
手元にありません

そのため
新品の特製 アニメ用筆 円と
使い込んだ旧名称の特選 削用を
参考として比較します

この2本は
同じ商品の新旧ではありません

もともとの穂先の形が
異なるため
古くなったときの変化も
それぞれ異なる可能性があります

松月堂の筆の名称について

松月堂の筆の名称について
補足します

古い特選 削用と
現在販売されている
特製 アニメ用筆 円は
同じ筆が
改名されたものではありません

以前の名称現在の名称開発の位置づけ
特選 削用特選 アニメ用筆 削用男鹿和雄さん・田中直哉さんらとの共同開発品を、改良・改称したもの
かすみ特選 アニメ用筆 かすみ「特選 削用」と組み合わせて使う、共同開発品の細部描写用筆
×特製 アニメ用筆 円共同開発品ではなく、松月堂が後から開発した別モデル
×アニメ用筆 削用 梢松月堂が後から開発した、特選削用と円の中間的なモデル
※名称と開発経緯は、松月堂公式サイト
「特選アニメ用筆とはどのような筆なのか」を
参考に整理しています(2026年8月確認)

特製 アニメ用筆 円は
共同開発品ではなく
松月堂が
後から開発した別モデルです

以下は
松月堂のオンラインショップと
公式解説へのリンクです

特製 アニメ用筆 円の商品ページを見る

松月堂のアニメ用筆の
開発経緯と特徴を見る

アニメ用筆 円と特選 削用の違い

新品の特製 アニメ用筆 円と使い込んだ特選 削用による植物のタッチの参考比較
新品のアニメ用筆 円と使い込んだ特選 削用の比較画像

別モデルによる比較ですが
穂先の形によって
タッチがどのように変わるのかを
確認できます

新品のアニメ用筆 円の特徴

  • 東紅よりも
    細いタッチになりました
  • 根元が太いため
    しっかりと力を入れやすい印象があります

古い特選削用の特徴

  • 今回使用した特選 削用は
    使い込むことで平筆に近い形になりました
使い込んだ松月堂の特選削用の穂先を、乾いた状態と水を含ませた状態で比較した写真
使い込んだ特選 削用の穂先の画像

乾いた状態では
毛先が広がり
水を含ませると
平筆に近い形にまとまります

今回の筆では
細い線は引きにくくなりましたが
その代わり
太い線を引きやすくなりました

新品のアニメ用筆 円とは
もともとの穂先の形が異なります

単純な新旧比較ではなく
筆の種類と穂先の状態による違いとして
ご覧ください

NICKER 線描筆 蒼鷹 Φ8.5

線描筆 蒼鷹 Φ8.5の新品と使用済みの筆で、点描や長い線を描き比べた画像
線描筆 蒼鷹 Φ8.5の新品と使用済み筆による比較画像

新品の特長

  • 点描も長いストロークも
    細いタッチになりました

3本の中では
特に繊細な印象があります

古い筆の特徴

  • 今回使用した筆は
    それほど古くなっていなかったようで
    筆先もそろっていました

そのため
新品と古い筆の違いは
東紅や特選削用ほど大きくありませんでした

使用済みの筆3本を参考比較

使い込んだ特選 東紅 大、特選 削用、線描筆 蒼鷹 Φ8.5による葉や草のタッチの描き比べ
使用済みの東紅、特選 削用、蒼鷹による比較画像
  • 東京名村大成堂
    特選 東紅 大
  • 松月堂
    特選 削用
  • NICKER
    線描筆 蒼鷹 Φ8.5

の使用済み筆を
描き比べました

使用済み筆は
それぞれ筆先の丸くなり方が異なります

特に放射状に広がる葉のタッチは
それぞれ違う植物の葉のような
印象
になりました

東紅で
特選削用と同じタッチを描くことは難しく
特選削用で
東紅と同じタッチを描くことも難しいです

これは
どの筆が優れているという話ではありません

筆先の形や古くなり方によって
描きやすいタッチが
それぞれ異なるということです

模写では筆の状態と技術を切り分ける

筆による違いは
模写をするときにも関係します

形や色、明暗を学ぶことが
目的であれば
元画像とは違う筆を使っても
模写はできます

ただし
元画像の筆跡やタッチまで
再現しようとすると
使っている筆の特徴が
大きく違う場合
同じように手を動かしても
同じタッチにはなりません

元画像を描いた人が使った筆と
似た特徴を持つ筆でなければ
筆跡まで忠実に再現することは
難しくなります

僕自身も以前
古くなった筆を使って
きれいな三角形のタッチを
作れずに悩んでいました

  • 自分の筆の動かし方が
    悪いのではないか
  • 練習が足りないのではないか

と考えていましたが
実際には筆先が丸くなり
そのタッチを
作りにくい状態になっていました

筆の状態を知らないまま練習すると
描き方だけに原因があると思い
必要以上に
苦労してしまうことがあります

見本と同じように
筆を動かしているのに
三角形の点描や
先の尖ったタッチにならない場合は
自分の技術だけでなく
筆先が丸くなっていないかも
確認してみてください

模写をするときは
描き方だけでなく

  • 使われている筆の太さや硬さ
  • 穂先の形や丸まり方
  • 筆を立てているのか
    寝かせているのか
  • 筆先を割っているのか

といった点も観察します

筆のコンディションが原因なのか
自分の動かし方が原因なのか
を切り分けることが大切です

まとめ

東紅、アニメ用筆 円、特選削用、蒼鷹による新品と使用後のタッチの比較表
新品の削用筆3本と、手元に残っていた使用済みの筆を比
使用済みの筆は、種類や摩耗の程度がそれぞれ異なります
新品では差が小さくても
使い続けると筆先の形によって描きやすいタッチが
変わります

新品の削用筆3本と
手元に残っていた使用済み筆を
描き比べました

今回の比較で
最も大きな違いを感じた
のは
新品の筆どうしではなく
使い込んだあとの
穂先の形
でした

同じ削用筆でも
穂先の丸まり方によって
描きやすいタッチは
変わります

新しい筆は先の尖ったタッチや
三角形の点描を描きやすい一方で
使い込んだ筆は
筆先を割った平行線や
丸みのある葉のタッチを
描きやすくなることがあります

筆による違いを
確かめたい方は
一度
新品と使用済み筆による
描き比べ表を作ってみてください

今は違いが分からなくても
半年後や1年後には
筆先の変化や
タッチの違いが
見えるようになるかもしれません

ただ使うだけでは
筆による違いには
なかなか気づけません

描いたタッチを並べて
筆先の形や
筆の動きを観察することで

少しずつ
それぞれの特徴が
見えてきます

また
模写をするときだけでなく
アニメの背景画集を見るときにも
使われた筆の状態や動かし方を
観察してみてください

  • 筆を立てたのか寝かせたのか
  • 筆先を割ったのか
  • 筆を回転させたのか
  • 使い込んだ筆の丸みを
    利用しているのか

描いた人の考え方や工夫を
推測できるようになると
背景画の奥深さを
さらに感じられると思います

下の動画では
実際に描きながら説明しています

筆の動きも確認したい方は
あわせてご覧ください

削用筆の動かし方を知りたい方へ

今回比較した筆で
実際にどのようなタッチを描けるのか
試してみたい方

下の記事では

  • 削用筆の持ち方
  • 筆を立てる・寝かせる使い方
  • 筆先を割って描く方法
  • 三角形の点描
  • 葉のような長いストローク

について
作例とともに紹介しています
削用筆の基本的な動かし方と
植物のタッチを描く方法

ABOUT ME
後藤太郎
アニメ背景美術の仕事に17年間携わり、現在はフリーのイラストレーターとして活動しています。 このブログでは、絵の練習・背景制作・屋外スケッチについて、実際に描いたり試したりして分かったことをまとめています。 詳しい経歴・制作実績は、画面下部の「運営者情報」からご覧いただけます。