「きれいな景色じゃないと描く気にならない」
以前の僕は
そういう感覚でスケッチしていました

でも、アニメ背景の仕事をしてみると
背景で描くものは
きれいな景色ばかりではありませんでした

室内、家の周り、道具、何気ない街並みなど
身近なものを描く機会の方が
多かったように思います

身近なものを描くと
遠くまで出かけなくても描けるので
描く回数を増やしやすくなります

同じものを何度も描くことで
時間帯や天気による見え方の違いや
自分に足りないことにも
気づきやすくなります

僕は17年ほど
アニメ背景の仕事をしてきました

仕事では
室内や街並み、主人公の家の周辺など
何気ない場所を描くことも多くありました

この記事では、専門学校時代に
背景会社の社長から言われた言葉をきっかけに
「きれいな景色」ばかり描くことと
「身近なもの」を描くことの違いについて
整理してみます

背景会社見学で言われたこと

アニメの専門学校に通っていたとき
背景会社見学で社長に
スケッチブックを見てもらったことがあります

そのときこう言われました
「きれいな景色ばかりじゃないか!!
なんで、もっと身の回りのものを描かない!!」

さらに
「身の回りのものも
きちんと目を向ければ美しさに気づくはずだ」
と言われました

そのときは
なぜ怒られているのか見当もつきませんでした

しかし10年以上たって
「きれいな景色」ばかり描くことと
「身近なもの」を描くことの違いに
少しずつ思い当たるようになりました

結論から言うと
きれいな景色ばかり描いていたときは
「描きたい!」
と思えなければ描きませんでした

一方、身近なものを描いていたときは
同じものを何回も描いていたので
条件の違いに気づくことが多くなりました

朝、昼、夕方など違う条件でも描いてみたいと
思うようになっていきました

趣味で描いているのであれば
どちらでもいいと思います

また、プロになるといっても
依頼を受けて描くイラストレーターと
自分の作品を描いて発表する画家では
必要な考え方は少し違うと思います

ただ
アニメの背景美術や
依頼を受けて描く仕事を目指すのであれば
身近なものにも目を向ける習慣は
かなり大事だった
のだと思います

おそらく社長は
そのことを言っていたのだと思います

背景会社見学のあとに描き始めたスケッチ
背景会社見学のあとに描き始めたスケッチ

ここで載せているのは
背景会社見学のあとに描き始めた身近なもののスケッチと
背景会社就職後に描いた部屋の一部です

きれいな景色ばかり描くデメリット

きれいな景色ばかり描くデメリットは
次の3つです

  • 天気や場所に左右されやすい
  • 普段から描く習慣が身につきにくい
  • アニメの背景では
    きれいな景色ばかり描くわけではない

きれいな景色ばかり描いていたときは
天気がいい日に
川や公園などの絵になりそうな場所へ遠出していました

曇ってきたり
描きたいと思える場所が見つからなかったりすると
描きませんでした

「描きたい!」というモチベーションに
頼っていたのだと思います

結局、条件がそろうことはあまりなく
めったに描けませんでした

そのため
普段から描くという習慣も身につきませんでした

また
これは背景会社に就職してから気付いたことですが
背景を描いていて「きれいな景色」は
意外と描く機会がありません

背景のほとんどは
室内や主人公の家の周辺などです

何気ない部屋や道、建物の一部など
一見すると絵になりにくい場所を描くことも多くあります

壮大な景色は
各話数の冒頭で使われるような
状況説明用の「街の俯瞰」といったカットくらいです

もちろん、そういった決めカットを
新人が担当することはありません

きれいな景色ばかり描いていても
腕を見せる機会は少ないのです

身近なものを描くメリット

身近なものを描くメリットは
次の4つです

  • 実物を見て描ける
  • 遠出をする必要がない
  • いろいろな条件で描ける
  • 描く習慣が身につきやすい

特に大きいのは
いつでも描けるので習慣化しやすいこと
です

これは作業部屋の窓から見える景色のスケッチです

作業部屋の窓から見える景色を、1年ほどかけて描いたスケッチ
作業部屋の窓から見える景色を、1年ほどかけて描いたスケッチ

時間ができたときに負担にならないように
ラフな感じで描き始めたんですが
気が付けば
1年と少しの間に9枚描いていました

また、作業部屋の窓から見える空を
15分ほどでスケッチしていたこともあります

作業部屋の窓から見える空を、15分ほどで描いたスケッチ
作業部屋の窓から見える空を、15分ほどで描いたスケッチ

遠くまで出かけなくても
時間をかけなくても
身近な場所だけで描けるものはあります

飽きっぽい性格ですが
毎回状況が変わるので
描くのが楽しみになりました

時間帯や画材を変えて同じものを描くことは
毎回違うものを描くよりも
気づくことや反省点が多い
と思います

何度も描いていると
自分に足りない知識や技術にも
気づきやすくなります

そのため
「次はあれをやってみよう」
「もう一回やってみよう」
と、次につながりやすくなります

同じ場所の中で描くものや構図を変えてみたいときは
1枚の紙を小さく区切って描くコマ割りスケッチ
参考になると思います

下の絵は
作業部屋から徒歩15分圏内で
1時間ほどで描いたスケッチです

作業部屋から徒歩15分圏内で、1時間ほどで描いたスケッチ
作業部屋から徒歩15分圏内で、1時間ほどで描いたスケッチ

僕の場合は
「絵の上達」にフォーカスを当てるよりも
「好奇心を満たすための確認」に
フォーカスしていました

実際に描いて疑問を確認することのほうが
楽しく続けることができました

人それぞれ適性があると思うので
自分は何に興味を持つのか?を考えて
続けるための工夫をしてみてください

まとめ

正直、学生の頃や新人の頃は
「身近なものを描く」意味がわかりませんでした

しかし今になって考えると
身近なものを描くことには

  • いつでも描けるので習慣化しやすい
  • 同じものを何度も描くことで
    条件の違いに気づきやすい
  • きれいな景色以外にも目を向けるきっかけになる

といった意味があったのだと思います

きれいな景色を描くことが
悪いわけではありません

ただ、描きたいと思える場所を探しているだけだと
描ける日や描けるものが限られてしまいます

身の回りのものに目を向けてみると
遠くまで出かけなくても
描けるものは意外とたくさんあります

できれば簡単にでもいいので
身近なものをスケッチしてみてください

描いてみると
普段は見過ごしていた形や色
時間帯による見え方の違いに
少しずつ気付けると思います

何度も描くことで
自分に足りない知識や技術にも
気づきやすくなります

僕にとっては
それが「身近なものを描く」大きな意味の1つ
だったのだと思います


身近なものを描く習慣を作りたい方は
30分でできる基礎練習と
無理なく続けるための考え方をまとめた記事

参考にしてみてください

ABOUT ME
後藤太郎
17年ほどアニメ背景美術の仕事をしてきました。現在は、絵の練習・背景制作・屋外スケッチについて、実際に描いたり試したりしながら気づいたことを発信しています。