• 自分の絵柄はこのままでいいのか
  • もっと個性的な絵を描きたい

そう思ったことはありませんか?

絵柄を変えたいときは
いきなり新しい絵柄を作ろうとするより
いつもと違う条件で描いてみる
ことをおすすめします

僕は17年間アニメ背景の仕事を続け
作品に合わせて色使いやタッチ
デフォルメの具合を調整してきました

個人制作でもいろいろ試した結果
変化を感じやすかったのが次の5つです

  • 作業時間を変える
  • 画材を変える
  • 使う色を変える
  • 紙の大きさを変える
  • 作業手順を変える

いつもと同じ条件で描いていると
どうしても同じ判断を繰り返します

条件を1つ変えると
いつもの描き方が使えなくなり
自分が何に頼って描いていたのか
どこを変えると印象が変わるのかが
見えやすくなります

この記事では
実際に試した例を使いながら
5つの方法を紹介します

絵柄を変えるには 描く条件を変える

それぞれの条件を変えると
次のような変化が起こります

  1. 作業時間を変えると
    絵に残す情報が変わる
  2. 画材を変えると
    いつもの線やタッチが使えなくなる
  3. 色数を変えると
    無意識の色選びに気づきやすい
  4. 紙の大きさを変えると
    省略と主役の見せ方が変わる
  5. 作業手順を変えると
    線・色・タッチの役割が変わる

普段と同じ条件で描いていると
どうしても
いつもと同じ判断を繰り返しやすくなります

もちろん、それが悪いわけではありません

ただ、絵柄を変えたいと思っているときは
あえて少し描きにくい条件を作ってみると
いつもの描き方から外れやすくなります

きれいに描くためというより
自分の癖や、まだ試していない可能性を
確認するために条件を変えてみる

そう考えると
絵柄を変える練習として
取り入れやすいと思います

作業時間を変えると絵に残す情報が変わる

まずは、いつもの作業時間を測ってみる

自分がいつも通りに描いたとして
どれくらい時間がかかっているか
把握していますか?

もし計ったことがないという方は
スケッチでもイラストでも構いませんので
5枚ほどいつも通りに描いて
作業時間を記録してみてください

どれくらい時間をかければ、
どれくらいの描き込み具合の絵になるかが
把握できるようになります

そのうえで
作業時間を2〜3倍にした場合と
1/3〜1/5程度にした場合を
試してみてください

半分にしたくらいでは
いつも通りの考え方で
粗く描いてしまうだけで
根本的に考え方を変えることが
難しいかもしれません

どちらも、始めのうちは
納得のいく形にはなりにくいと思います

横軸に作業時間、縦軸に完成度を取り、いつもの時間と完成度、短時間・長時間での変化を示した模式図
作業時間を大きく変えると
いつもの完成度から外れた条件で
絵を成立させる必要があります

仮に時間と完成度の関係が
上図のようだとした場合
いつもの完成度の部分ではなく
短時間で描いたとき
長時間で描いたときのバランスで
絵を成立させる必要があります

作業時間を短くすると
何を残すかが見えてくる

短い時間では、下書きに
時間をかけている余裕がありません
何色も使っている時間もありません

そうすると
自然と制限が出てきます

その制限の範囲内で
人に見せても恥ずかしくないものに
仕上げる方法を考える必要があります

形は狂っているけれど
勢いがあるかもしれない

色数は少ないけれど
見やすいかもしれない

いつもとは違う評価基準で考えることが
必要になってくるかもしれません

できたものは
その時間内での自分の限界です

その限界を理解したうえで
伸ばすべき長所や改善点を
洗い出していく必要があります

短時間で描くことは
ただ雑に描くことではありません
「どこを見せ場にするか」
「何を残して、何を省くか」
「どのように見せるか」
そういう絵としてまとめる判断を
早くする練習にもなると思います

実際に時間を大きく制限して描いてみたい方
「1分スケッチのやり方をまとめた記事」
参考になると思います

作業時間を長くすると
描き込みの限界が見えてくる

逆に、倍の時間をかけるのも
意外と難しい
です

僕の場合
もうこれ以上は描き込みようがない
と思った絵を先輩に見てもらうと
「もっと描けるよ
この辺が全然描けてない」
と言われたことがあります

描き込める量は、手の速さだけでなく
知識量にもかなり左右される
と思います

自分では描き込んだつもりでも
先輩には「反射光がない」
「建築物のディテールが甘い」
「影の中の表現が甘い」など
まだまだ描ける部分が
見えていたんだと思います

  • 色数を増やす
  • デザインを複雑にする
  • 形を正確にとる

など

いつもより時間をかけたり
手数を増やしたりするには
さらに深い理解が必要
になります

長い時間描いていれば
勝手に密度が上がるわけではありません

頭の中で
絵に必要な情報が整理できていないと
時間を増やしても何をすればいいのか
わからなくなってしまいます

長い時間描き込めるということは
それだけ表現したい情報がある
ということです

もちろん、手数が多ければ良い
というわけではありません

ただ
必要なところに手を入れられるということは
それだけ観察している情報や
知識の引き出しが多いという
判断材料にもなる
と思います

画材を変えると
いつもの線やタッチが使えなくなる

水彩色鉛筆、透明水彩、アクリル絵の具
パステル、ポスターカラー
ポスターカラーに糊を混ぜて描くなど
できるだけバラバラの画材で描いたものを
並べました

透明水彩やアクリル絵の具など異なる画材で描いた風景スケッチ4点を並べた画像
異なる画材で描いた作例
同じように描こうとしても
画材によって線や塗り、仕上がりの印象が変わります
異なる画材で描いた地図とコンパス、動物、街並み、グラスなど4点の作例を並べた画像
画材を変えて描いた作例
使える表現が変わることで
いつもの描き方から外れやすくなります

自分では同じように描いているつもりでも
画材が変わると
明らかに雰囲気は変わります

画材を変えると
いつも通りには描けなくなります

画材を変えると起きやすい変化
  • いつもの色が使えない
  • グラデーションをかけにくい
  • 細かいところが描きにくい

など

上記のような描きにくさが出てきます

最初は嫌になるかもしれません
でも、最初の1枚を描き切ることができれば
次はこうすればうまくいくだろうと
改善点が思いつきます

3枚くらい描けば
いつもの画材に戻したときに
描きやすさや物足りなさを感じる
と思います

画材を変えることは
使える道具を増やすためというより
無意識にやっている、いつもの描き方を
意識するため
にも使えます

 

使う絵の具の数を変えると
無意識の色選びに気づきやすい

例えば僕の場合
透明水彩の24色セットを使ってましたが
使い慣れてきたころに
思い切って色数を減らしてみました

下の写真は
100均の名刺入れで作ったパレットです

100円ショップの名刺入れで作った水彩パレットと、3原色や分裂3原色の色の組み合わせを示した図
色数を絞るために作った小型パレット
使う3原色を入れ替えながら混色を試しました

いつも同じ色数を使っていると
いつも通りの混色をしてしまいがちでした

そのため
なかなか色使いを変えることが
できませんでした

でも、色数を絞ったおかげで
混色の考え方が
シンプルになった気がします

不便だと思えば
どんどん色を入れ替えていきます

このあたりは
混色を考える入口にもなります

シアン、マゼンタ、イエローのCMYで
試してみたらどうだろう?
赤青黄の3原色とは何が違うの?

そんなふうに
色を選ぶ基準そのものに
興味が向くようになりました

無意識に色を選んでいるという方は
一度、色数を減らして描いてみると
気づくことがある
と思います

色を減らすと不便になります

でも、その不便さがあるからこそ
自分が普段どんな色に頼っていたのかが
見えやすくなります

実際に色数を制限して描いてみたい方
「4色だけで山を描き、色の役割を確認する練習」
試してみてください

紙の大きさを変えると
省略と主役の見せ方が変わる

スケッチ会に参加したときに
先生からもっと大きな筆を使った方がいい
と指摘されて
小さい紙に大きな筆で描く練習を始めました

紙と筆の比較を載せました

大きなスケッチブックと小さい筆、小さなスケッチ帳と大きな筆を並べた比較写真
以前の「大きな紙+小さな筆」と
現在の「小さな紙+大きな筆」の比較

下図で一番大きい左上はサムホール
B5サイズくらいの紙です

左下は、大きい単語帳です

B5程度から単語帳程度まで、異なる大きさの紙に描いた風景スケッチを並べた比較画像
紙の大きさを変えて描いたスケッチ
小さい紙では細部を省き
大きな形で整理しやすくなりました

大きな紙に小さな筆で描いた絵に比べて
小さな紙に大きい筆で描いた方が
対象を大きな塊として捉えている感じが
出やすくなりました

紙を小さくしたら起きた変化
  • 細かく描き込めないので
    省略やデフォルメした絵になった
  • わかりやすい主役を描くようになった

紙が大きいときは
画面の収まりや遠近感の表現に
気を取られていて
主役や見せ場をあまり作れていなかった
と気づきました

紙が小さいと
画面全体が見やすくなります

作業範囲も狭くて済むため
色数を増やしても
バランスが取りやすくなります

人にもよると思いますが
僕の場合は、紙が一回り小さくなると
作業時間は半分くらいになります

大きい紙では
どうしても全体を埋めることや
遠近感を作ることに
意識が向きやすくなります

小さい紙では
細かく描き込めないぶん
わかりやすい主役があった方が
絵としてまとめやすくなります

絵柄を変えたいときは
紙の大きさを変えるだけでも
省略の仕方や見せ方が変わると思います

紙だけでなく 道具の太さでも同じことが起こる

紙の大きさだけでなく
使う道具の太さでも似たことが起こります

ボールペンで描いていると
つい細かいところまで
気になってしまいますが
ペン先の太いサインペンを使うと
細かい部分は描けないので
細かいシワといった部分より
大きな流れを見るようになりました

細いペンで描いた人物スケッチ5点と、太いペンで描いた人物スケッチ5点を上下に並べた比較画像

細いペンと太いペンで描いた人物スケッチの比較
線が太いほど細部より大きな動きを拾いやすくなります

道具を使い分けることで
頭で処理する情報を
荒くするか細かくするかを
コントロールしていると言えるかもしれません

作業手順を変えると
線・色・タッチの役割が変わる

これは、ペンで線画を描いて
透明水彩で着彩をしたあとに
さらにペンでタッチを描き込んだものです

普段は
線画を描いて着彩したあとに
ここまで多くタッチを追加しません

でも、この絵を描いたときは
水彩でできた濃淡に合わせて
ペンでタッチを入れて
立体感や存在感を強調しました

透明水彩で着彩し、仕上げにペンのタッチを加えた「ワニの後ろ足」の料理イラスト
透明水彩で着彩したあと
ペンのタッチを加えて立体感や質感を補強した作例

ペン画の場合
着彩前にペンを入れた絵と
着彩後にペンを入れた絵では
違った仕上がりになります

あとでペンを入れる場合
すでにある着彩の立体感や空間を
補強するように線を入れるので
線に表情をつけやすくなり
説得力や存在感が増します

逆に、先にペンを入れると
色がはみ出さないように
意識してしまうため
縮こまった感じに
なってしまう可能性があります

どちらが正解というより
手順によって意識することが変わります

描き比べたことがない方は
ぜひ一度、描き比べてみてください

ずいぶん意識していることが違うと
感じることができると思います

描き方を変えたら
他の人にも見てもらう

ここまで紹介した5つの変更は
何度か繰り返し試してみないと
実感は得にくいと思います

なので
最初から成果を出そうとするより
気分転換の遊びとして
取り入れてみると良いと思います

作品を見てくれる人がいるなら
見てもらった方がいいです

思わぬところを
褒められるかもしれません

僕の場合
恥ずかしいほどの失敗だと思った作品ほど
Xに絵を投稿すると反応がいい
ということが何度かありました

初めは戸惑いましたが
もしかしたら
自分でうまく描けたと思う絵は
意外性がなく
面白味に欠けるのかもしれない
と思うようになりました

最初は
失敗と思っている絵を見せるのは怖いです

それでも
誰かに見てもらったときのリアクションを
確認しながら
自己評価と他者からの評価のギャップを
埋めていく必要があると思います

自分では失敗だと思っている部分が
他の人には面白く見えることもあります

そういう反応を知ることも
絵柄を広げるうえでは
大事なのかもしれません

まとめ|絵柄を変えたいときは
小さな制限を1つ試してみる

絵柄を変えたいときは
いきなり新しい絵柄を作ろうとするより
まず描く条件を変えてみる
と良いと思います

今回紹介した5つの変更
  • 作業時間の長さを変える
  • 画材を変える
  • 使う色を変える
  • 紙の大きさを変える
  • 作業手順を変える

どれも、いつも通りに描けない状況を
作るための方法です

うまくいく方法だけを繰り返していると
どうしても同じような絵になりやすいです

意識的に不慣れなことを試して
多くの失敗や確認作業をすることも
必要なのだと思います

成功と失敗の幅が広ければ広いほど
自分の中の許容範囲も広くなります

最初から全部を試す必要はありません

気になったものを1つだけ選んで
いつもと違う条件で描いてみてください

小さな一歩でも踏み出してみると
次はこれも試してみようと
少しずつ新しいことを試したくなる
と思います


【あわせて読みたい記事】

条件を変えて描いてみた結果
自分に何が足りないのか
整理したくなった方

「絵を描くときに必要な知識を
分類と関係性から整理した記事」

も参考になると思います

今回紹介した方法を
15〜30分程度の練習として
続けてみたい方

「30分でできる絵の基礎練習を
目的別に選べるようにまとめた記事」

もどうぞ

絵柄や表現の幅を広げるために
本から学んでみたい方

「初心者〜中級者向けの絵の勉強本を
難易度と読む順番つきでまとめた記事」

も参考にしてみてください

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後藤太郎
アニメ背景美術の仕事に17年間携わり、現在はフリーのイラストレーターとして活動しています。 このブログでは、絵の練習・背景制作・屋外スケッチについて、実際に描いたり試したりして分かったことをまとめています。 詳しい経歴・制作実績は、画面下部の「運営者情報」からご覧いただけます。