遠景・中景・近景の描き込みを整理する|距離とコントラストとシルエットの考え方
- 遠くのものは明暗のコントラストが弱くなる
- 遠くのものの形は省略する
といったように
「距離」と「コントラスト」や「距離」と「形」を
結びつけて考えている人は多いと思います
では
「コントラスト」と「形(シルエット)」を
結びつけて考えている人は
どれくらいいるでしょうか?
僕は17年ほど
アニメ背景の仕事をしてきました
仕事では
遠景・中景・近景の距離感を
明暗や描き込み量を変えながら
整理して描くことがあります
この記事では
距離を軸に
- コントラスト
- 階調数
- シルエット
- 描き込み量
を関連づけて考えることで
遠景・中景・近景の
距離感と描き込み具合を対応させる考え方をまとめます
先に結論を書くと
距離が遠くなるほど
- 明暗のコントラストを弱くする
- 階調数を減らす
- シルエットを単純にする
- 描き込み量を減らす
と考えます
この記事では
この4つをどのように関連づけて考えるのかを
順番に説明します
遠景・中景・近景を描き分けるときに
- 何を根拠に描き分けたらいいのかわからない
- 納得するまで手を動かすしかない
と悩んでいる方の
参考になればと思います
遠景・中景・近景を
3つのグループとして考える方法が初めての方は
「遠近感が出ないときに遠景・中景・近景で整理する考え方」も
先に読むとわかりやすいと思います
※この記事で紹介するのは
アニメ背景の仕事を通して
筆者が距離感と描き込み具合を整理するために使ってきた
一つの考え方です
アニメ背景に限らず
風景画やイラストなどで
遠景・中景・近景を描き分けるときにも
応用できると思います
記事内の説明図は
この考え方をわかりやすく整理するために
筆者が作成したものです
距離とコントラスト(明暗差)の関係
まず
明暗差と距離の関係を考えるために
単純化したモデルを考えてみます
現実とは異なりますが
光源から離れるほど
物体に届く光が弱くなると仮定します
白い物体の光面と影面で考えると
光源から遠くなるほど
光面と影面の明度差も小さくなると考えられます
このモデルは
距離とコントラストを関連づけて考えるための
入り口として使います

現実の光の法則を示す図ではありません
ただし
ここから実際の風景を考えるときに扱うのは
光源からの距離ではなく
観察者からの距離です
遠景・中景・近景を
絵として描き分ける場合には
観察者から遠くなるほど
コントラストを弱く整理することで
距離感を表現できます
「遠景」のコントラストが決まれば、「中景」「近景」のコントラストの範囲も決まる
もし下図の上段の図のように
観察者の立ち位置と遠景の
コントラストが決まれば
遠景だけでなく中景、近景の
コントラストの範囲も決まります

コントラストを強くする画面整理の一例
遠景のコントラストを
画面の中で一番弱い範囲として決めると
中景・近景のコントラストも
相対的に決めやすくなります
たとえば
遠景を弱く
中景をその次
近景を強くすると
観察者からの距離と
画面上のコントラストを
対応させて整理できます
もちろん
逆光や夜景など
光の条件によっては
この関係が当てはまらなかったり
逆転したりする場合もあります
ビル群を使って
この考え方を具体的に見たい方は
「ビル群を描くときの考え方」でも紹介しています
絵という画面の中で
距離と適切なコントラストが対応していないと
ちぐはぐなものになってしまいます
距離ごとに明暗の幅を整理する
ここでは
遠景・中景・近景を描き分けるために
それぞれで使う明暗の幅を
意図的に変えて考えてみます
遠景は明暗の幅を狭く
中景はそれより広く
近景はさらに広くする
このように
使う明暗の範囲を分けることで
距離ごとの強さを整理しやすくなります
この明暗の幅を
グラデーションで示したものが
下の図の右側になります

遠景のグラデーションは
ベタ塗りに見えないでしょうか?
中景のグラデーションに関しても
しっかりとした明暗差があるにしては
それほど色幅の広いグラデーションには
見えないと思います
このことからわかるように
明暗差をはっきり見せたい部分では
明暗境界に
むやみに中間色を入れたり
ボカしたりしてしまうと
明暗差の視認性が下がり
立体が弱く見えてしまうので
注意が必要です
距離ごとに階調数を整理する
ここからは
実際の見え方をそのまま再現するのではなく
遠景・中景・近景の情報量を整理するために
階調数を意図的に変えて考えます
先ほどの明暗の幅を
いくつかの階調で示したものが
右下の図になります

遠景ほど階調数を少なくした例
この階調で分けたものと
グラデーションをかけたものでは
同じ色幅なのに
ぱっと見の印象が全然違います
同じ色幅でも
階調で分けたものか
グラデーションにしたものかで
メリハリが違ってきます
塗り分けるかグラデーションをかけるかを
意識して使い分けないと
見づらい絵になってしまいます
「距離」と「階調数」に「シルエット」を対応させる
光面の色、影面の色
ハイライト、反射光など
表現しなければいけない明暗だけでも
3階調では足りません
光と影の中間色や質感表現などを考えだしたら
キリがありません
絵にするには
それらの情報を取捨選択して
まとめる必要があります
では、どのようにして
絵として必要な情報を選択するのか?
僕は
距離と階調数を対応させて考えるのが
簡単だと思います
たとえば
距離ごとの情報量を整理するために
- 遠景=2階調
- 中景=3階調
- 近景=5階調程度
と設定してみます
実際に必ずこの階調数になるわけではありません
遠くなるほど階調数を減らし
近くなるほど増やすという
情報整理の一例です
階調数を増やしすぎると
グラデーションのようになり
メリハリが弱くなります
下図の上段に
同じシルエットで階調数を変えたものを載せています
距離感の違いを
十分表現できているのが
わかると思います

遠景・中景・近景の距離に対応させた木の描き分け例
上図の下の段では
近づくほど形もよく見えることから
シルエットの描き方も変えています
遠景では
大胆に形を省略しています
中景では
葉を房(塊)として意識しています
近景では
1枚ずつ葉の向きを意識したタッチで
表現しています
実際の背景制作でも
遠景まで近景と同じ密度で描いてしまうと
距離差が弱く見えることがあります
そのため僕は
遠景ほど階調数を減らし
シルエットを単純にして
筆を入れる回数も減らして整理します
たとえば
近景を10描き込むなら
中景は3、遠景は1くらいに抑える
そのくらい極端に考えると
遠くのものまで同じ密度で描き込んでしまう失敗を
防ぎやすくなります
距離が遠くなるほど
階調数を減らし
シルエットを単純にし
筆を入れる回数も減らす
そう考えると
距離感と描き込み具合を対応させやすくなります
まとめ
なんとなく手を動かしていて
遠景・中景・近景の描き分けで迷うときは
一度
距離を軸に
- コントラスト
- 階調数
- シルエット
- 描き込み量
を関連させて考えてみると
整理しやすいと思います

遠景・中景・近景を整理する全体像
距離感と描き込み具合を
対応させる練習として
記事内に載せた木の図を
簡易的に模写してみてはいかがでしょうか?
一度これらの関連性を体験しておけば
仮に遠景しか描かない場合や
近景しか描かない場合であっても
自分の中で距離感と描き込み具合を
コントロールしやすくなると思います
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