アニメ背景美術の考え方|桜を目立たせるための色と構図の工夫
僕は17年ほど
アニメ背景の仕事をしてきました
その中で感じているのは
背景はただきれいに描けばいいわけではない
ということです
そのカットで
何を目立たせるのか
何を見せたいのか
そこを考えながら
色を決めたり構図を微調整します
この記事では
僕が美術を担当した
『とびだせ上越 予告編』の最終カットを題材に
桜を目立たせるために
なぜ青空を選んだのか
なぜ雲をシンプルにしたのか
そのときに考えたことを
整理します
へぇ〜
そんなことを考えて背景を描いているんだ
そう感じてもらえたらうれしいです
背景を描くときの考え方を知ることで
絵を描く人も、描かない人も
いつもと少し違う視点で
アニメを楽しめるかもしれません
まず、このカットで
目立たせたいものを決める
アニメの背景を描く場合
下図のようなレイアウトの指示に従って作業します
では、下図のような指示で背景を描く場合
どのような背景が考えられるでしょうか?

今回のカットで目立たせたいのは
手前にある桜です
自然と桜に目がいけば
このカットの目的は達成できた
と考えられます
ただし
桜の部分はセルと呼ばれる部分です
アニメーターが作画し
色指定が色を決めるため
背景パートではコントロールできません
そのため
背景側で考えられるのは
空の色をどうするか
雲をどのくらい描き込むか
桜より目立つものを入れすぎないか
といった部分になります
今回の目的は
桜を目立たせることです
その目的を達成するために
空の色、雲の形、描き込みの量などを
手段として選んでいきます
目的と手段を分けておくと
うまくいかなかったときに
配色の問題なのか
描き込みの問題なのか
技術の問題なのか
原因を考えやすくなります
小さく描いて、背景の候補を出してみる
この絵の場合
背景で描くのは主に「空」です
それを踏まえて
仮に桜を白っぽいピンクとして
どうすれば桜が目立つかを
小さな画像で考えました

今回、僕が思いついたのは
上図の3つです
この中から一つを選びます
ただ
「何となくこれにした」
というだけでは
説得力に欠けるだけでなく
再現性もなくなってしまいます
そのため
なぜこの背景を選んだのかを
理由と一緒に整理していきます
桜を目立たせるために青空を選んだ理由
色のコントラストで目立たせる
何かを目立たせるときに
まず考えやすいのが
色のコントラストです
色のコントラストは下図のように
明度・色相・彩度のコントラストがあります
今回の桜は
白っぽいピンクとして考えました
そのため
同じように明るい雲で囲むよりも
青空で囲んだ方が
桜との違いを作りやすいと考えました

形や描き込みの違いで目立たせる
色だけでなく
形や描き込みの違いでも
目立つものは変わります
例えば
- 1つだけ細い
- 1つだけ丸い
- 1つだけ細かい
(シルエットが複雑、細かい描き込みなど) など
まわりと違うものは
目に入りやすくなります
図にすると
このようになります

「青空の色」と「雲の形」を選んだ理由
今回の桜は
白っぽいピンクとして考えました
そのため
明度のコントラストと
色相のコントラストを作るために
桜のまわりを青空で囲むようにしました
また、これは視線を右側に集め
左側に逃げないようにするという意図もあります
さらに
細かいものは目立ちやすいので
雲の形が複雑すぎると
桜よりも雲に目がいく可能性があります
そのため今回は
雲は桜よりもシンプルな印象になるように
意識しました

まとめ
これが唯一の正解というわけではありません
他にもいろいろな考え方があると思いますが
今回は僕がこのカットで考えたことを
整理してみました
背景は
ただ景色をきれいに描くだけではなく
何を目立たせるために
何を描きすぎないかを考えることも大事です
もし自分だったら
このカットをどう描くだろう
そう考えながら見てみると
アニメの背景も少し違って見えるかもしれません
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