この本をひとことで言うと

filmmaker’s eye  レンズの言語
映画のシーンに学ぶ画作りとストーリーの語り方
グスタボ・メルカード (著)


この本をひとことで言うなら、
「どんな印象を与えたいか」に対して
「どのレンズの特性を使えば
その印象が表現できるのか」
具体的な映像例を交えながら
丁寧に解説してくれる一冊です

僕は17年間
アニメ背景の仕事をしてきました

この記事では
その経験を踏まえて
イラストの画面づくりにも応用できそうだと
感じた点を中心に紹介します

感情から表現方法を探せる

まず気になったのは
目次の構成です

「孤独」「気まずさ」「不安」「シュール」など
感情や空気感が項目として並んでいます

最初は
「なぜレンズの本なのに
感情が目次に並んでいるんだろう?」
と疑問に思いましたが
読み終わって納得しました

画をつくるときは
まず「何を表現したいか」があり
レンズはそれを実現するための
手段のひとつです

この本は
レンズの技術を並べるのではなく
「こういう雰囲気を出したい」という目的から
使える表現を探せるように構成されています

そのため
辞書のように使える本だと思います

レンズ表現は意外とシンプルに整理できる

映像表現には
無数のテクニックがあるように感じていましたが
この本を読んでみると
意外とシンプルに整理できそうだと気づきました

たとえば

  • 焦点距離
    「広角」「標準」「望遠」
  • レンズの特性
    「被写界深度」「フレア」「色収差」
    「光学ディストーション(樽型・糸巻型)」など
  • カメラワーク
    「ズーム」「パン」など
  • その他
    特殊レンズなど
広角・望遠による歪みとフォーカス、フレアの違いを示した図
『filmmaker’s eye レンズの言語』を参考に
レンズによる歪み・フォーカス・フレアなどの特徴を筆者が整理した図

こうして分類してみると
組み合わせはいろいろありますが
「基本となる種類は
それほど多くないんだな」
と感じました

広角・望遠で変わる距離感と心理的な印象

本書を読んで特に印象に残ったのは
望遠と広角による距離感の違いが
心理的な印象にもつながること
です

望遠と広角では
距離感が大きく違って見えます

そのため僕も
距離感の違いは意識して描き分けていました

ただし

  • 望遠
    二人の距離が近く見えることで
    親近感を感じやすくなる
  • 広角
    二人の距離が離れて見えることで
    拒絶しているように感じられる

といった
心理的な効果までは考えていませんでした

図にすると
下図のようになります

広角では人物同士が離れて見え、望遠では近く見える距離感の違いを示した図
『filmmaker’s eye レンズの言語』を参考に
広角・標準・望遠による撮影距離と人物同士の見え方・印象の違いを筆者が整理した図

それまで一定に見えていた二人の距離が
次のカットで
レンズと撮影距離の違いによって
突然変わって見えたら
大きなインパクトがあります

今までは
画面へのおさまりや
カメラマンが被写体に
どこまで近づけるか
といった理由で
レンズを使い分けているのだと思っていました

でも実際には
色や俯瞰・あおり
カメラのポジション
フレーミングなどと同じように
心理的な印象をつくるための
表現方法のひとつ
でもあることがわかりました

今後は
レンズによって距離感がどう変わるかだけでなく
その距離感によって
どんな心理的な印象を表現したいのか

まで考えて
絵を描きたいと思いました

まとめ

この本を読んで
「あの迫力のある映像は
こうやって作っていたのか!」
と気づくことができ
映像の見方が変わりました

映像をつくる人だけでなく
イラストを描いている人にとっても
レンズの特性を利用して
どのように印象を表現しているのか

という考え方は
参考になると思います

この本には
そんな「印象をつくるためのヒント」が
たくさん詰まっています

filmmaker’s eye レンズの言語
映画のシーンに学ぶ画作りとストーリーの語り方
グスタボ・メルカード(著)


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後藤太郎
アニメ背景美術の仕事に17年間携わり、現在はフリーのイラストレーターとして活動しています。 このブログでは、絵の練習・背景制作・屋外スケッチについて、実際に描いたり試したりして分かったことをまとめています。 詳しい経歴・制作実績は、画面下部の「運営者情報」からご覧いただけます。