絵具の仕組みがわかる本『見たい! 聞きたい! 透明水彩!』を読んで
絵を描くときに
絵具の知識って必要だと思いますか?
あくまでも僕個人の感想ですが
僕はこの本を読んで
紙の上で絵具がどう動くのかを
なんとなくイメージできるようになり
以前より描きやすくなりました
僕は17年間
アニメ背景の仕事で
ポスターカラーを使ってきました
それでも
絵具そのものについては
知らないことがたくさんありました
日貿出版
水彩を使っていて
絵具や紙の性質をもう少し理解したい方には
特に参考になる本だと思います
この本の特徴
絵具の歴史から
ラベルの読み方、材料、筆、紙、技法まで
幅広く扱っている本です
透明水彩の
- 透明性
- 顔料番号
- グラニュレーション
- ステイン色
など
ラベルに書かれている情報の意味や
それぞれの特徴についても
解説されています
僕自身も
こうした情報を知ることで
絵具の特徴をより意識して使うようになりました
また、画家と絵具メーカーの技術者による
対談形式なので読みやすく
途中で話が脱線するところからも
2人とも本当に画材が好きなんだな
という雰囲気が伝わってきます
読んでいると
自分でもいろいろ試してみたくなります
この本を読んだきっかけ
それまでは
絵具について詳しく知らなくても
特に不便を感じていませんでした
ところが
絵を基本から学び直すために
混色について調べ始めると
すぐに自分の知識の限界にぶつかりました
下図のように
ポスターカラーで塗った色をスキャンして
Photoshopのスポイトツールを使い
明度や彩度を調べていたところ
混色すると彩度が落ちるはずなのに
彩度がほとんど変わらない場合があるなど
それまでの知識だけでは
説明できないことが出てきたんです

厳密なデータが取れるとは
もともと思っていませんでしたが
中途半端な理解とデータのまま進めても
自己満足にすらならないな
と思っていました
そんなとき
立ち寄った本屋で見つけたのが
この本です
この本を読んで印象に残ったこと
紙の染み込みと発色
この本には
中学の理科や高校の化学で習ったような内容も
少し出てきますが
基本的には専門用語の知識がなくても
読み進めることができます
下の図は、本文を参考に
絵具に含まれる成分が表面張力で
まとまっているイメージを図示したものです

たとえば
界面活性剤を入れることで
- 凝集しやすい顔料を分散させる
- 表面張力を下げて紙に染み込みやすくする
といった効果があることが
説明されています
僕にとって
一番難しかったのはこのあたりでしたが
これまでの経験と結びつけることで
なんとなくイメージできるようになりました
本書では
紙の表面に顔料が残っている状態が
もっとも彩度が高くなるため
紙に染み込みすぎても
発色が悪くなる
と説明されています
これを知って
「なるほどねー」と思いました
それまでは
特に何も考えずに描いていましたが
この本を読んでからは
筆を使って
紙の表面に適切に顔料を定着させる
という意識を持つようになりました
また紙と絵具についても
以前は
- 絵具の水分量
- 絵具をはじきやすい紙かどうか
くらいしか考えていませんでした
しかし、今では
紙が絵具をはじく原因は
絵具にあるのか
紙にあるのか
と分けて考えられるようになりました
紙を選ぶときにも
- にじみやすさ
- 染み込みやすさ
- 発色の良さ
といった観点が増えました
顔料の大きさで色の見え方が変わる
絵具が
顔料とノリでできていることは
知っていましたが
顔料の大きさについては
考えたことがありませんでした

本書では上図のように
大きさの異なる2種類の顔料があった場合
水分が少ないと
小さな顔料が大きな顔料の影に隠れて
見えなくなる部分があると説明されています
つまり水分量を増やすことで
黄色の粒子が見える部分が増え
全体が黄色っぽく見えるようになる
というわけです
これは完全に盲点でした
また
同じ顔料でも粒子の大きさによって
赤っぽくなったり
黄色っぽくなったりするものも
あるとのことでした
そんな微妙な違いで
色が変わるとは知りませんでした
このことを知ってからは
Photoshopのスポイトで得た数値も
そのまま絶対視するのではなく
- どの程度参考にするのか
- そこから何を考えるのか
を意識するようになりました
また、水分量を変えると
顔料の見え方だけでなく
紙目や質感の見え方も変わります
ポスターカラーを使って
水分量による質感の違いを塗り比べた作例は
「厚塗り」と「薄塗り」の違いを紹介した記事に
まとめています
絵具の混色は色相環どおりにならないことがある
絵を基礎から学び直すにあたり
混色についても調べていました
ところが
水彩画の入門書を何冊読んでも
「これが正解」
と言えるような
混色の根拠や方法を
わかりやすく説明した本が
なかなか見つかりませんでした
僕は
色相環、明度、彩度と対応させながら
絵具や混色を考える方法を
探していたんです
ところがこの本には
- 混色は本当に難しく
厳密には絵具で色相環を
再現することはできていないらしいこと - 色相環上では補色とされる色の絵具を混ぜても
必ずしも無彩色のグレーになるわけではないこと
などが書かれていました
「どおりで
どの水彩画の本を読んでも
はっきり書かれていないんだな」
と納得しました
混色で作りたい色を作る方法については
別の記事で
色相・明度・彩度の3つに分けて考える方法を
紹介しています
→ 混色を色相・明度・彩度で考える方法
まとめ
紙への染み込みや
顔料の大きさ、混色など
それまで経験として
なんとなく理解していたことが
科学的な説明と結びつくことで
バラバラだった知識が
頭の中でつながりました
今回紹介した内容は
本のごく一部です
なんとなく使っている技術はあるけれど
うまく言葉で説明できない
という方にとっては
この本を読むことで
足りなかった知識を補えるかもしれません
なんとなく使っていた技術を
「なぜそうなるのか」を理解したうえで使える技術
に変えるきっかけになる本だと思います
日貿出版
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