僕は17年ほど
アニメ背景の仕事をしてきました

ポスターカラーで背景を描くときは
描きたい質感に合わせて
「厚塗り」「薄塗り」
使い分けることがあります

この記事で扱う
ポスターカラーの「厚塗り」と「薄塗り」で
大きく違うのは
絵具を溶く水の量です

水を多く使う「薄塗り」は
画用紙の目を生かした
ザラザラした質感を出しやすく
水を少なくする「厚塗り」は
紙の目が目立ちにくい
ツルツルした質感を出しやすくなります

そのため僕は
自然物や古い壁などには薄塗り
金属や新しいものには厚塗り
といったように
描きたいものの質感に合わせて
使い分けています

この記事では
ポスターカラーの
「厚塗り」と「薄塗り」の違いと
それぞれのメリット・デメリット
質感による使い分けについて紹介します

「厚塗り」と「薄塗り」の違い

「厚塗り」と「薄塗り」で違うのは
絵具を溶く水の量です

薄塗りは
絵具を多めの水で溶くので
画用紙の凸凹がわかりやすくなります

厚塗りは
絵具を少なめの水で溶くので
画用紙の目が絵具で埋まりやすくなります

そのため、画用紙表面の凸凹が
わかりにくくなります

下の作例を見てください

コバルトブルーとブルーセレストを、厚塗りに近い水分量・薄塗り・白を混ぜた厚塗りの3段階で塗り比べた作例
僕がポスターカラーで塗り比べた作例
中段の薄塗りは紙目が見えやすく
下段の厚塗りは滑らかに見えます

使用絵具:ニッカー ポスターカラー
使用紙:ニューTMKポスター 特厚口

使う絵具の顔料によるので
薄塗りをすれば
必ずザラザラが表現できるわけではありません

ザラザラした質感には
画用紙の凸凹を利用する場合と
グラニュレーションを利用する場合があります
(グラニュレーションについては
後半で触れます)

ただ、薄塗りの方が
ザラザラした質感を出しやすいので
自然物や古い壁などを描くときに使います

反対に、厚塗りは
ツルツルした面に見えやすいので
金属や新しいものを描くときに使います

シンプルですが
使い分けられるようになると
表現の幅が広がります

僕は、デジタルでブラシを使い分けたり
テクスチャーを貼ったりする感覚に近いものとして
使い分けています

上部の古い壁を薄塗りでザラザラに、下部の床を厚塗りで滑らかに塗り分けたグレーの作例
薄塗りで古い壁のザラザラした質感
厚塗りで床のツルツルした質感を表現した作例

上の作例は「薄塗り」と「厚塗り」を使い分けて
「 古いザラザラした壁」と「ツルツルした床」を
表現しています

細かく描きこまなくても
質感の違いが出ているのが
わかると思います

「厚塗り」のメリット・デメリット

メリットは
色を合わせやすいことです

厚塗りは水分量が一定になりやすいので
同じ色を作りやすくなります

デメリットは、次のような点です

  • 水分が少なすぎると
    乾いた絵具がひび割れる
  • 上から水分の多い絵具を重ね塗りしにくい
  • 下書きの線が完全に消えるので
    アタリを取り直す手間が増える
  • 絵具が割れたり、溶けたり、凸凹していたりすると
    上からペンを入れにくい

「薄塗り」のメリット・デメリット

メリットは、次のような点です

  • 上から薄塗りで重ね塗りしやすいので
    複雑な表現がしやすい
  • 絵具を塗っても下書きの線が薄く見えるので
    描きやすい
  • 上からペンを入れやすい

デメリットは、次のような点です

  • 水分量で明度が変わるので
    色を再現しにくい
  • 水分が多すぎると、発色が悪くなる

薄塗りは水分量とタイミングが重要

「薄塗り」をする場合は
水分量とタイミングを覚える必要があります

「地塗り」といって
画用紙を濡らした状態で塗る工程があります

「薄塗り」をする場合は
画用紙の水分が多い状態で
絵具の水分を少なめにして描く
場合もあれば

紙の表面がほぼ乾いている状態で
絵具の水分を多めにして描く
場合もあります

どちらの場合も
経験しながらタイミングと水分量を
覚えていくしかありません

ポスターカラーを使い慣れない新人は
色を合わせるのに苦労するため
色が合わせやすい「厚塗り」で描き慣れてから
「薄塗り」を身につけることが多いのではないかと思います

 

僕が背景会社に就職した2005年頃は
「上手い人は薄塗りの人ばかり」と聞いたことがあります

上手いなと思う背景で
画用紙につけた下書きのカーボン紙のあとが
質感や輪郭線のように
うっすらと見えるのが
かっこよくて憧れました

薄塗りとグラニュレーション

グラニュレーションとは
顔料の粒子が大きかったり
顔料同士が密集しやすかったりして

画用紙の凸凹にはまり込み
粒子のように見えることです

「薄塗り」でザラザラを表現したい場合は
グラニュレーションを起こしやすい色かどうかを意識して
使う色を選んでいます

僕が使っている
ニッカーのポスターカラーには
グラニュレーションの表記はありません

一方、ホルベインの透明水彩では
グラニュレーションが確認できる色を
「G色(Granulation)」として表示しています

絵具の顔料や紙への染み込みによって
発色がどう変わるのか知りたい方

絵具と紙の仕組みについて紹介した記事
も参考にしてみてください

下の絵は
ずいぶん前に描いた透明水彩画ですが
グラニュレーションを利用して
スキレット(黒い蓋つきのフライパン)の
ザラザラした質感を表現しています

燻製器とスキレットを描いた透明水彩画。スキレットの黒い表面にグラニュレーションによる粒状感を表現している
グラニュレーションを利用して
スキレットのザラザラした質感を表現した透明水彩画

まとめ

厚塗りと薄塗りを
使い分けられるようになるには
いろいろ試してみる必要があると思います

まずは
ザラザラした質感なら薄塗り
滑らかな質感なら厚塗り
を一つの目安に
いろいろ試してみてください

使いこなせるようになると
水分量やタイミングだけで
いろいろな質感を表現できるようになります

「あっ、これ
グラニュレーションで表現してみたい」
「これは厚塗りで描いてみたい」

そんなふうに
描きたい質感に合わせて
塗り方を選べるようになると
表現の幅が広がります

まずは、いろいろ試してみてください


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ABOUT ME
後藤太郎
アニメ背景美術の仕事に17年間携わり、現在はフリーのイラストレーターとして活動しています。 このブログでは、絵の練習・背景制作・屋外スケッチについて、実際に描いたり試したりして分かったことをまとめています。 詳しい経歴・制作実績は、画面下部の「運営者情報」からご覧いただけます。