僕は17年ほど
アニメ背景の仕事をしてきました

仕事では
空や雲を描くこともあります

でも、最初から
雲を描くのが得意だったわけではなく
強い苦手意識がありました

あまりにも雲が描けなかったころ
当時勤めていた背景会社の社長から
「そんなに雲が描けないんなら
いつも同じ雲を描きなさい
描き慣れたらアレンジしていけばいいから」
と言われました

つまり、毎回ちがう雲を描こうとするのではなく
まずは同じ参考を見て
同じ形と配置で描き慣れた方がいい
ということでした

その結果
以下の図のように変化しました

同じ雲を描き続ける前と後

いつも同じような雲を描くことで

  • 雲の配置やリズム
  • 筆の動かし方
  • 絵の具の乾き具合のタイミング

など、ひとつずつに
集中しやすくなりました

おかげで、半年くらいで
雲への苦手意識はかなり減りました

この記事では
僕が雲を描くときに受けた改善点として

  • V字に配置する
  • ボケ過ぎない

という2つについてまとめます

雲を描くときに
どこに注意すればいいかわからない方の
参考になればと思います

「アドバイスを受ける前の雲」について

アドバイスを受けたのは
もう15年くらい前のことです

アニメ背景の仕事を始めて
4年目くらいのことでした

それまでの自分が
どんな雲を描いていたのかは
よく覚えていませんが
たぶん
下図のような雲だったと思います

上手く描けなかった頃の雲の再現図

当時は
次のようなことで悩んでいました

  • 筆の動かし方に規則性がなく、再現性がない
  • 形を整えようとして、雲がどんどん大きくなり
    青空の部分が少なくなってしまう

雲を描くときに
絵の具の乾き具合やにじみに対応するだけで
精いっぱいでした

何度描いても
同じような失敗をくり返していました
そんなときに
「そんなに雲が描けないんなら
いつも同じ雲の参考を見て
いつも同じ形で同じ配置の雲を描きなさい
描き慣れたらアレンジしていけばいいから」
とアドバイスされました

最初は
同じ雲ばかり描いて意味があるのか
よくわかりませんでした

でも続けてみると
形や配置で迷う時間が減り
筆の動かし方や絵の具の乾き具合に
集中しやすくなりました

改善点について

社長から言われた具体的な改善点は2つです

  • V字に配置する
  • ボケ過ぎないようにする

V字に配置する

「ジグザグに配置する」だったり
「V字に配置する」だったり
言い方はいろいろあるようですが

僕はいつも
左下のノーマルのような雲の配置を
参考にしていました

雲の配置と形 「ノーマル」「望遠気味」

ノーマルの場合は
画面上の方を少しあおり気味にしたいので
一番手前の右上の雲に角度をつけています

それに対して
望遠気味のときは
雲の配置を水平気味にして
区別しています

そうすることで
同じ形、同じ配置を
大きく崩さないようにしていました

雲の角度を線で表すと
下図のようになります

雲の角度を線で図示

会社にあった背景の中から
描きやすそうな雲を選びました

その雲を参考にして描き続けた結果
身につけた雲の配置が下の図です

ちぎれ雲を追加

描き慣れたころに
ちぎれ雲を追加しはじめました

ちぎれ雲を追加

ちぎれ雲を描き慣れないうちは
どんどん描き足してしまって
画面がうるさくなっていました

でも
下図のように空を大きな平面として考え
雲と雲の間の空間をつなぐように
ちぎれ雲を描くことを意識してからは
以前よりシンプルに描けるようになりました

空を1枚の平面として考える

同じ配置、同じ形の雲を描き続けたおかげで

  • 雲が単調に並ぶことがなくなった
  • ノーマル、広角、望遠
    水平、あおりを描き分けやすくなった

と感じています

ボケ過ぎないように

アニメ背景ではイラストと違い
カメラワークがあったり
画面に映るのが一瞬だったりします

そのため、雲がボケ過ぎていると
見づらくなってしまうことがあります

特にアクションシーンでは
雲がボケ過ぎないように
気をつけなさい
とアドバイスされました

僕は雲に苦手意識があったので

  • 途中で乾かないように
    水分が多い状態で雲を描いていた
  • 雲の形を整えるために
    筆を動かしすぎていた

ということをしてしまっていました

その結果
雲の形がはっきりしていませんでした

「ボケ過ぎているくらいなら
途中で紙が乾いてしまっても構わないから
シャープに描きなさい」
と言われてからは
空の部分が少し乾き始めてから
雲を描き始めるようになったので
しっかり雲の形を作ることができるようになりました

「雲をV字に配置する方法」の欠点

雲をV字に配置する方法には
欠点もあります

たとえば、入道雲や鱗雲には
そのまま使いにくいです

雲の配置や使い方には
いくつもの考え方があります

V字に配置する以外にも
空の広がりを見せたり
見せたいもののシルエットを強調したり
季節感を出したりするために
雲を使うことがあります

雲を「なんとなく空に描くもの」ではなく
画面の中でどんな役割を持たせるか考えたい方は
雲の配置や役割を整理した記事
参考になると思います

まとめ

毎回、雲の配置を考えながら
臨機応変に描こうとしていたときは
絵の具の乾き具合やにじみに対応するだけで
精いっぱいでした

何度描いても
同じような失敗をくり返していました

僕にとっては
毎回同じような雲を描き続けることが
習得しやすい方法だったと思います

ただ、最近になって
画面構成の勉強を始めてからは
空間を説明するための雲の配置だけでなく
雲を配置するための別の考え方も
身につける必要がある
と感じるようになりました

「雲をV字に配置する」という方法は
絵の具でアニメ背景を描いていたころに
よく見た方法だった気がします

デジタルになってからは
以前ほど見かけなくなりました

もしかしたら、時代遅れだったり
アニメ背景の一部で使われていた考え方
なのかもしれません
万能ではありません

でも、少なくとも僕にとっては
空の空間表現を身につけるうえで
とても役に立った考え方でした

もし雲の配置に苦手意識がある場合は
ためしに同じ雲を何度か模写してみるのも
よいと思います

実際に手を動かしてみると
本物の雲や
上手い人の描いた雲を見たときに
何か気づくことがあるかもしれません

雲の配置だけでなく
形、空間、光、色、画面構成など
絵を描くときに考えることを整理したい方
絵を描くときに必要な知識の全体像を整理した記事
参考になると思います

ABOUT ME
後藤太郎
17年ほどアニメ背景美術の仕事をしてきました。現在は、絵の練習・背景制作・屋外スケッチについて、実際に描いたり試したりしながら気づいたことを発信しています。