本棚を「本棚らしく」描く3つの考え方|影・色・配置を整理する
僕は17年ほど
アニメ背景の仕事をしてきました
教室や図書室、部屋の中など
本棚のある背景を描く機会も
何度もありました
本棚を描くときに大事なのは
本を一冊ずつ細かく描くことよりも
見た瞬間に「本棚だ」と伝わることだと思います
僕が仕事で描いてきたアニメ背景では
2.5秒から3秒くらいで
次のカットに切り替わることも多く
その短い時間の中で
何が描いてあるのか
パッと見てわかる必要があります
そのため
「現実そのまま」よりも
「それっぽさ」を優先させて
短時間で理解できるように
工夫することもあります
本棚らしく見せるために
僕は特に
- 影で本の形を潰しすぎない
- 色数を絞る
- 一冊ずつではなく
本棚全体のリズムとして考える
ことを意識しています
この記事では
この3つを中心に
実際の仕事で意識してきたことを
自作の比較図を使いながら紹介します
本を影で潰しすぎない
下図では左右のどちらが
見た瞬間に本棚としてわかりやすいでしょうか?

本の大小や形を読み取りやすくなります
右側の図の方が本の大小が理解しやすく
パッと見て本棚だと
わかりやすかったのではないでしょうか
おそらく左側の作例は
本の上部が影の中に入ってしまったことで
本と本棚との境界がわかりにくくなり
本の大小による変化が
伝わりにくくなったからだと思います

境界がわかりにくくなります
しかし
本を影の中に入れることが悪いとは限りません
本全体に光が当たる場合
メリット
- 労力が少なく描きやすい(早く描ける)
- 見やすい(わかりやすい)
- 本の大小で変化をつけやすい
デメリット
- わかりやすい反面
長い時間見ていると飽きてしまう
そのため
本の厚みや傾斜など
他の要素を使って
画面が単調にならないように
変化をつける必要があります
本の上部が影に入る場合
メリット
- 影で本と本棚に一体感がでる
- 陰影の情報が増え
画面に複雑さを出しやすい
デメリット
- 絵の具で描く場合、労力がかなり増える
- 本と本棚の境界がわかりにくくなる
- 本の大小での変化が伝わりにくくなる
このように
本を影の中に入れると
画面に複雑さを出しやすい反面
本の形はわかりにくくなります
本の上部に光が当たっていた方が
見やすく、早く描けるので
僕がアニメ背景で本棚を描く場合は
本が影の中に入りすぎないように
意識しています
ただし
ゲーム背景やイラストなど
長時間見てもらう絵の場合は
少し考え方が変わるかもしれません
本の上部をあえて影の中に入れるなどして
画面に複雑さを加えることも
選択肢のひとつだと思います
本棚の上下で落ち影の角度が変わる
照明の位置によっては
下図のように本棚の上部と下部では
天板によって落ちる影の角度が
かなり違う場合があります

上段と下段では棚板から落ちる影の角度が変わります
現実のまま描いてしまうと
下図左側のように
下段に行くにしたがって
本の頭の部分が
影の中に入ってきます

本の形が読み取りやすいように整理することもあります
デジタル作画であれば
光が当たっている色で描いた後に
部分的に影色へ変更しても
大した労力はかからないかもしれません
しかし
絵の具で描く場合は
そう簡単にはいきません
画面内に光源と本棚の両方を
描かなければいけない場合など
例外はあります
ただ、そうでない場合は
僕は本が影の中に入らないように
描くことが多いです
光の向きと本棚の陰影
本棚を描く場合
影も重要な要素になります
下図のように本棚が右側を向いている場合
光の向きが左からであれば順光
右からであれば逆光気味になります

本や棚板にできる影の形も変わります
上図右側の逆光気味の方が
シンプルな陰影表現になり
大きな本の影の中に
隣の本を入れることで
面白味を出しやすくなります
そのため
描きやすく、見やすい絵に
しやすいと思います
上図左側の順光の方は
逆光気味の絵ほど陰影がシンプルにならず
手間がかかります
色数を絞って本棚を整理する
まず3色を三角形に配置する
最初から色数を増やすと
配色を整理するのが難しくなります
そこで僕は
まず3色に絞って配置し
そこから必要に応じて
色を増やしています

そこから本の厚みや大きさを変えて
細かなリズムを作っていきます
パースが付いても3色の考え方は同じ
奥行きのある本棚でも同様に考えます

3色を離して配置してから全体を埋めていく考え方は同じです

大きな3色の配置から細かく分割していきます
疎密・厚み・大きさで変化をつける
単調にならないように以下の項目を意識して
配置していきます
- 「疎」⇔「密」
- 「厚」⇔「薄」
- 「大」⇔「小」
物足りなかったら
最後に隠し味程度に
色数を増やします
僕が参考作品を見ていると
子ども向けアニメやイラストでは
本棚やおもちゃ箱、洋服など
色が多く使われているように感じるものでも
意外と3色くらいだったりします
色数を増やしすぎると
うまくまとめる方が
大変になるからかもしれません
本の模様は明度差で考える
本に模様を入れるときは
地の色との明度差を考えます
暗い色の本には
明るい模様を入れます
明るい色の本には
暗い模様を入れます
そうすることで
本の模様が見えやすくなります

必要に応じて本の輪郭を残します
ただし
模様を入れる位置によっては
本のシルエットが
わかりにくくなることがあります
たとえば
明るい本の上の方の端に
暗い模様を入れてしまうと
本の上部の形が
少し曖昧になります
反対に
本の上部を少し残して
その下に模様を入れると
本のシルエットを残しやすくなります
もちろん
シルエットが曖昧になることが
すべて悪いわけではありません
本の形を説明しすぎると
かえって絵が
硬く見えてしまうこともあります
どのくらい形を見せるのか
どのくらい曖昧にするのか
そのあたりを見ながら
模様を入れていくとよいと思います
本は一冊ずつではなく「本棚全体」で考える

本棚全体を大きな直方体として捉え
本はその中の模様として考えます
本棚を描くとき
本を一冊ずつがんばって描こうとすると
かなり大変です
僕も経験が浅かったころは
必要以上に本を細かく描こうとしていたと思います
でも
本棚を描くときに大事なのは
一冊一冊の本を目立たせることではなく
本棚全体が本棚として見えることです
本の質感や陰影も大事ですが
本はあくまでも
本棚の一部分です
大先輩に
「本棚の本なんてのは
本棚の模様みたいなものだと
考えるくらいでちょうどいい」
と言われたような気がします
今考えると
これは本棚を描くときの
かなり大事な考え方だったと思います
本を一冊ずつ描くのではなく
本棚全体の中にある
模様やリズムとして考える
そうすると
描くときの負担も少なくなりますし
画面としても整理しやすくなります
まとめ
本棚を描くときは
本を一冊ずつ細かく描くよりも
まず本棚全体がどう見えるかを
考えるようにしています
特に意識しているのは
次のようなことです
① 本を影で潰しすぎない
- 必要なら陰影を現実より整理する
- 光の方向も利用する
② 色数を絞る
- まず3色から考える
- 模様は明度差を見る
③ 本棚全体のリズムとして考える
- 疎密
- 厚い/薄い
- 大きい/小さい
本棚は
細かく描き込めば描き込むほど
よく見えるとは限りません
アニメ背景では短い時間で
「本棚」と伝わることも
かなり大事です
まずは
本棚全体をひとつの大きな形として見て
その中に
本の大小や色のリズムを入れていく
そのくらいで考えると
本棚を描きやすくなると思います
本棚を描くのが苦手な方は
いきなりフルカラーで描くのではなく
写真を参考にしたり
自分の本棚を見たりしながら
本棚全体を
凸凹した白い箱として考えて
グレーで描いてみるのも
よい練習になると思います
白黒の3〜5階調で描いてみると
頭の中が整理しやすいと思います
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