数々の失敗から学んだ「木を描くときに考えていること」
この記事を読んでいる人の中には
以前の僕と同じように
木に苦手意識がある人は多いのではないでしょうか
僕は17年ほど
アニメ背景の仕事をしてきました
それでも、仕事を始めたころは
木をどう考えて描けばよいのか
まったくわかりませんでした
当時描いていたのが
下の図のような木です

頑張れば頑張るほど
この図のように
- 葉のかたまりが横並びになる
- 同じ大きさの丸いかたまりになる
という状態から抜け出せませんでした
今思えば
木を葉の丸いかたまりとしてしか見ておらず
葉と枝のつながりや
枝が伸びる方向
幹や枝の立体感などを
ほとんど考えていなかったのだと思います
木が上手く描けない原因は
木を描くときに
何を考えればよいのかを
まだ知らないことかもしれません
この記事では
僕が失敗を繰り返し
先輩に指摘されながら身につけてきた
「木を描くときに考えていること」を
できるだけ経験した順にまとめます
初心者の方には
自分の経験と比較しながら
読んでもらえればと思います
「やってはいけないこと」や
「意識していること」を知るだけでも
今より一段上の木を描くヒントになるかもしれません
幹や枝ぶりと葉のかたまりに一体感がない
最初に問題になったのは
下の図のような葉のかたまりでした

先輩から「なんだこの団子は!」とか
「腹筋みたいになってる!」
と言われたため、次のことを意識して修正しました
- かたまりの大きさに変化を付ける
- かたまりに前後の重なりを付ける
- 葉の向きと大きさを意識して輪郭をとる
それを意識して描いたのが、下の図です

葉のかたまりと枝の太さが合っていない
この描き方にも慣れ
少しずつ木らしい形になってきたころ、今度は
「葉のかたまりと幹の太さや枝の方向が一致していない」
と指摘されました
下の図の真ん中のように
葉のかたまりと枝ぶりのつじつまが
合っていなかったのです

原因は
葉のかたまりと幹の枝ぶりを
別々に考えていたことでした
そこで
葉に隠れて見えない部分の枝ぶりや太さも意識し
木全体に一体感が出るようにしました
枝がすべて幹の奥側に伸びている
ようやく木を描くことに慣れ
下の図のような形で安定してきたころ
また新しい指摘を受けました
どこが不自然かわかるでしょうか

指摘されたのは
「枝が幹の奥方向にしか伸びていないのは不自然」
ということでした
描いた木を真上から見下ろした状態で考えると
下の図の右側のようになります
枝が伸びる方向に偏りがあることがわかります

枝ぶりや太さばかりに気を取られ
枝が伸びる方向まで考えられていなかったのです
描きやすいため、無意識に
同じような枝ばかり描いていたのだと思います
実際の木を真上から見ると
枝は下の図のように、さまざまな方向へ伸びています

木を正面から見たとき
枝が伸びる方向は大きく分けて
次の3つに分類できます
- 横方向
- 奥方向
- 手前方向
下の図では、幹と3方向の枝を描き分けています

指摘を受けて修正したものが
下の図の右側です
木全体の形は変えず
枝の1本を手前方向に変更しています

枝の方向と光の向きを組み合わせて考える
枝の方向は
横・奥・手前の3つに分類できます
それぞれ左右に伸びる場合があるため
合計すると下の図のような6パターンになります

毎回同じことで頭を使うのは大変です
そこで
- 右からの順光
- 左からの順光
- 右からの逆光
- 左からの逆光
という
絵を描くときによく使う4つの光の方向について
枝にどのような影がつくのかを試しました

大変そうに見えるかもしれませんが
一度試して考え方を理解しておけば
本番で毎回悩む必要がなくなります
頭の体操として取り組んでみると
意外と楽しいと思います
幹と枝の太さが不自然
木を描くことに慣れ
苦手意識が薄れてきたころには
幹の質感も意識するようになっていました
しかし
下の図のような幹と枝を描いていたとき
また指摘を受けました
どこを指摘されたのか
想像できるでしょうか


下の図は、修正前と修正後を比較したものです

修正したポイントは
「枝分かれしない限り
枝や幹の太さは大きく変わらない」
ということです
筆で描いているうちに気が緩み
太さが変わってしまっていたのだと思います
質感や枝ぶりばかりに気を取られ
枝の太さがいい加減になっていたときに指摘されました
枝分かれするときの幹と枝の太さ
幹や枝が分かれるときの太さは
下の図のように
パイプやホースが束ねられている状態に
たとえて説明されることがあります
枝分かれしない限り
急に太くなったり細くなったりしない
という考え方です

しかし、見た目の印象だけを頼りに
違和感がないように描こうとすると
時間がかかります
そこで
直角を使った簡単な作図方法を紹介します
枝の太さを考えるときの目安として
「枝の断面積の合計が、幹の断面積になる」
と考えます
数式で表すと、以下のようになります

この数式が成立するのは
a、b、cが直角三角形の3辺になる場合です

つまり、直角三角形を利用すると
枝分かれするときの太さと角度の関係を
下の図のように考えられます

実際の木を観察すると、木の種類によっては
当てはまらない場合もあると思います
それでも
木を描くことに慣れるまでの
目安としては使える方法です
自分が描く幹や枝の太さに自信がない人は
参考にしてみてください
街路樹や公園の木は枝が剪定されているため
不自然な太さになっている場合もあります
観察するときには注意が必要です
この作図方法については
以下の記事を参考にしました
枝分かれの枝の太さは三角定規で決めよう!
葉のかたまりの下側が一直線に並んでしまう
意外と直しにくかったのが
葉のかたまりの下側が
一直線に並んでしまう癖です
下の図の左側では
紫色で囲んだ部分が一直線になっています

1本の木だけであれば
それほど目立たないこともあります
しかし
街路樹のように木が横一列に並んでいる場合は
不自然に見えやすくなります
そのため、普段から下の図の青い部分が
単調にならないように気をつけています

この癖は、なかなか直せませんでした
「一直線にならないようにしよう」
と考えるのではなく
「葉のかたまりの下側を面白い形にしよう」
と考えるようになってから
いつの間にか一直線になることが
少なくなった気がします
木の幹が丸く見えない
遠景や中景の木を描くことに慣れてきたころ
「それでは木の幹が丸く見えない」
と指摘されました
当時描いていた幹を、断面と一緒に表すと
下の図のようになります

当時の僕は、絵を平面的に考えていて
空間や立体を描いているという意識が
薄かったのだと思います
幹の質感ばかりを考え
凸凹の模様を均等に入れていました
しかし、立体として考えると
かなり不自然な形になっています

これでは
上の図の黒枠内のように
幹の一部分だけを描いたとき
丸い形に見えません
そこで先輩から言われたのが
「円柱を等分する意識を持って描く」
ということでした

このように考えて描けば
幹の一部分しか画面に入っていない場合でも
円柱であることが伝わりやすくなります
もちろん、実際の木に
これほどわかりやすい凸凹があるわけではありません
立体が伝わりやすいように
意識的に強調して描いています
幹や枝に面白みを加える
幹や枝の角度の変化を利用する
質感や凸凹を細かく描くほどではない
遠景気味の木の幹をシンプルに描いていたとき
先輩から次のように注意されました
「まるで、ずどんとした鉄パイプみたいだ
上から下まで影が同じ太さということはないだろう
もう少し工夫しなさい」
そのときに描いていたのが
下の図のような幹です

遠景であれば問題にならない場合もありますが
中景や近景の木としては単調すぎます
そこで、木や幹の傾きを
明暗で表現してみることにしました
まず、曲がった木の幹の陰影を
下の図のような角柱や円柱に置き換えて考えます

それを幹や枝に応用したものが
下の図です
わかりやすくするため、大げさに描いています

幹の傾きを
明暗によって表現していることがわかると思います
幹や枝のねじれを利用する
木の幹は鉄パイプのようにまっすぐではなく
ねじれている場合もあります
ねじれている場合は
下の図のように影の部分の太さが変化します

まっすぐに見える枝や幹にも
ねじれや角度の変化があります
その変化を利用し、鉄パイプのように
単調で直線的な形にならないように工夫します
枝や幹を
角柱や円柱として考えるのがポイントです
明暗で枝の前後関係を表す
次に考えたのが、奥方向に伸びる枝と
手前方向に伸びる枝の描き分けです

円柱にできる影の面積を変えることで
枝が伸びる方向の違いを表します
傾いた円柱を
- 奥方向
- 横方向
- 手前方向
の3つに分類します
真上から光を当てた場合
奥方向に傾いた円柱は
光の当たる面積が大きくなります
反対に
手前方向に伸びる円柱は
逆光に近い状態になるため
影の面積が大きくなります

実際の写真を見ても
白い丸で囲んだ部分の陰影が
枝の伸びる方向によって異なっていることがわかります

これを枝の陰影に当てはめると
下の図のようになります

上の図のように
ほぼ真上から光が当たっている場合は
- 奥へ伸びる枝は順光に近くなる
- 手前へ伸びる枝は逆光に近くなる
ため、影の面積が変わります
言われてみれば当たり前のことですが
実際に描こうとすると
なかなか表現できません
実物の木だけでなく
上手なアニメ背景も観察してみてください
枝の方向による明暗の違いが
しっかりと表現されていることに気づくと思います
枝先は上を向いている

先輩から
「重みで下がっている枝でも
枝先は上を向いているものだ」
と指摘されて以来
枝先の方向を意識して描いています
自分の手を見て枝ぶりを描く
自分の姿を撮影したり
自分の体を参考にしたりするのは
キャラクターを描くときだけではありません
曲がった円柱や木の枝を描くときにも
自分の手や指を参考にすることがあります

手前にグッと来たり、奥にスーっと行ったり
複雑に曲がったりする形は
ちょうどよい資料が見つかるとは限りません
そのようなときは
自分の手を動かしながら
形や影のつき方を確認します
木と木の間隔を考える
葉のかたまりと幹や枝に
一体感を出せるようになったころ
「木と木が近すぎる
どれくらいの距離があるつもりで描いているんだ?」
と注意されました
それをきっかけに
木と木の距離を観察したり
簡単な測量のようなことを
したりするようになりました

距離を測ったからといって
すぐに上手く描けるようになるわけではありません
それでも
絵を空間として捉える癖がついたので
やってよかったと思っています

自然の森では、木と木の距離はさまざまです
一方
街路樹や公園などの管理された場所では
木の種類によって
おおよその間隔が決まっている場合があります
木だけでなく
- 窓の大きさはどれくらいか
- 部屋の広さはどれくらいか
といったものも
自分の肩幅や歩幅
両手を広げた長さ(およそ身長)を使って
大まかに測っていました

キャラクターの大きさに対して
どのくらいの大きさであれば自然に見えるのか
さまざまなものの大きさを
自分の体と比較して覚えておくと
描くときの説得力につながると思います
初心者におすすめの木の練習方法
木の考え方や描き方は
人によって少しずつ異なります
そのため
最初はできるだけ同じ人が描いた木を選び
遠景から近景の順に模写するのがおすすめです
1冊の画集や
1つのアニメ作品に絞ってもよいと思います
遠景の木は省略されている分
情報量が少なく
色や形の意味を理解しやすいからです
最初から近景の木を模写すると
情報量が多いため
何を見ればよいのかわからなくなる場合があります
まずはシンプルな遠景の木から始め
色やタッチの意味を考えながら模写してみてください
何度か模写をして
ある程度、木を描くときの考え方をつかんでから
写真や実物を見て描くのがおすすめです
最初から写真や実物を見て途方に暮れるよりも
まずは上手い人が木をどのように整理しているのかを学び
理解できるものを少しずつ増やしていく方が
取り組みやすいと思います

まとめ
木を上手く描けない原因は
木を描くときに何を考えればよいのかを
まだ知らないことかもしれません
木を描き慣れている人が
当たり前のように考えていることや
気をつけていることを
まだ知らないだけかもしれないのです
僕自身も、失敗を繰り返し
先輩から指摘されることで
少しずつ考え方を身につけてきました
この記事が木に興味を持つきっかけになり
実際に手を動かしてもらえたら嬉しいです
【あわせて読みたい記事】
今回のように
形・空間・光などを関連づけて考えると
木以外のものを描くときにも
判断しやすくなると思います
絵を描くときに必要な知識を
形・空間・光・色・構図・表現の
6つに分けて整理した記事もあります
木の模写だけでなく
短時間で取り組める基礎練習を探している方は
30分でできる練習を
目的別にまとめた記事も
参考にしてみてください