画面全体に色をのせたら、手前から仕上げる3つの理由
絵を描き込むとき
なんとなく遠景から順番に
仕上げていませんか?
画面全体に色をのせたあとは
近景から仕上げると
- 画面内のコントラストの基準を作りやすい
- 遠景の描き込み具合を判断しやすい
- 作業時間を配分しやすい
という利点があります
僕は17年ほど
アニメ背景の仕事をしてきました
背景会社に入ったころは
遠景から順番に描き込んでいましたが
あとから色や描き込みを
調整し直すことが何度もありました
先輩から
「地塗りのあとは手前から描き込んだ方が
二度手間を減らせる」と教わり
作業手順を変えました
地塗りとは
湿らせた画用紙が乾く前に
画面全体へ色を塗る作業です
実際に近景から仕上げてみると
最初に近景の明暗や
描き込み具合を決められるため
それを基準に
中景や遠景を調整しやすくなりました
この記事では
画面全体に色をのせたあと
近景から仕上げる3つの理由と
実際の作業例を紹介します
手前から仕上げる3つの理由
最も強いコントラストの基準を作れる
遠景から仕上げていくと
近景に近づくほど
コントラストを強くする必要があります
中景まで
思った通りのバランスで描けていても
近景を描き始めると
近景の影色が黒っぽく見えたり
遠景のコントラストが
弱すぎて見えたりすることがあります
その結果
遠景から色を調整し直すことになれば
二度手間です
そこで、最初に近景を描き
画面内で使う
最も暗い色と明るい色を決めます
先にコントラストの幅を決めておけば
それを基準に
中景や遠景で使う
明暗の幅を調整しやすくなります
遠景の描き込み具合を判断しやすい
遠景から細かく仕上げると
遠景を必要以上に描き込んでしまうことがあります
近景まで描いたあとに見直すと
遠景が細かすぎて
近景よりも目立って見えるかもしれません
先に近景の描き込み具合を決めておけば
それを基準に
中景や遠景をどこまで省略するか
判断しやすくなります
たとえば、全力で描き込んだ状態を10とすると
近景は10、中景は5、遠景は3くらいに
抑えるつもりで描きます
ただ、実際に描いていると
近景10、中景7、遠景5くらいになり
思ったより差がつかないことがあります
自分では描き込み量を変えているつもりでも
画面全体で見ると
どの距離も同じような密度に見えてしまう状態です
そういうときは
近景に10回筆を入れたら
中景には3回、遠景には1回だけ筆を入れる
くらいに極端に考えた方が
画面上ではちょうどよい差に見えることがあります
近景・中景・遠景を同じ密度で仕上げるのではなく
手前を基準にして
奥に行くほど筆を入れる回数そのものを減らす
そう考えると
遠景を描き込みすぎる失敗を防ぎやすくなります
近景・中景・遠景で
コントラストや描き込み具合を
どのように変えるかについては
距離、階調数、シルエットを
関連させて考える方法をまとめた記事で
もう少し詳しく紹介しています
作業時間を配分しやすい
次の2つの描き方を
比べてみてください
- 集中力があるうちに近景を仕上げ
遠くなるほど描き込みを減らす - 遠景から始め、手前になるほど描き込みを増やす
後者は
作業の終盤ほど描く量が増えていきます
そのため、完成までに
どれくらい時間がかかるのか
予測しにくくなります
仕事として絵を描く場合は
所要時間を見積もることも大切です
先に描き込みの多い近景を仕上げ
中景、遠景へ進むにつれて
作業量を減らしていく方が
時間を配分しやすくなります
描き込み量に差をつけておくと
作業時間の見通しも立てやすくなります
手前をしっかり描き
奥へ行くほど作業量を減らす
そう決めておくと
最後まで同じ密度で描き込んでしまい
思った以上に時間がかかる
という失敗を防ぎやすくなります
ただし、絵によっては
中景から仕上げることもあります
中景を基準にして
近景と遠景の明暗や描き込み具合を
調整する方法です
そのため
必ず手前から描かなければならない
というわけではありません
画面の構成や制限時間に合わせて
どこを基準にすると描きやすいか
いろいろ試してみてください
実際の作業
下の図は
地塗りをした状態から
近景を描き込むまでの制作過程です
一番上は
地塗りをしたあとに
エアブラシで画面全体の明るさと色味を
調整した状態です

次の段階では
手前にあるダーツと看板から塗りました
地塗りによって作った
色の空間を壊さないように
手前から仕上げていきます
天井の電球も
この段階で塗っています
この絵では
電球の周辺が画面内でも明るく
鮮やかな部分になるため
色と明るさの基準として
早い段階で塗りました
上の図の最下段まで進むと
画面全体の明暗や色の基準が
ほぼ決まります
ここまでくれば
あとは全体のバランスを崩さないように
中景や遠景を描き進めていきます

上の図は絵の具による描き込みを
終えた状態です
下の画像は
デジタル加工の前後を比較したものです
コントラストや彩度を強調したり
照明には
隠し味程度に光の処理を加えています

最後に
自分の手に絵の具をつけて作った手形を
スキャンし
デジタルで貼り込んで完成です

まとめ
画面全体に色をのせたあと
手前から仕上げる理由は次の3つです
- 最も強いコントラストの基準を作れる
- 遠景の描き込み具合を判断しやすい
- 作業時間を配分しやすい
絵がうまく描けたかどうかだけでなく
作業の途中で
同じ場所を何度も直していないか
確認してみてください
自分なりの作業手順が決まると
迷いや二度手間を減らせます
どこから描き始めると作業しやすいか
現在の手順を見直してみてください
遠景・中景・近景の
コントラストや描き込み量を整理するときは
まず距離を3つのグループとして整理しておくと
考えやすくなります
遠景・中景・近景を
3グループで整理する考え方については
別の記事で詳しく紹介しています
また、描く順番だけでなく
形、空間、光、色、構図など
絵を描くときに考えることを
全体から整理したい方は
必要な知識の分類と関係性を
まとめた記事も参考にしてみてください